©︎Giuseppe Milo / flickr

正六角形の石柱群が並ぶ北アイルランドの海岸線

北アイルランド・アントリム州の海岸線を埋め尽くす、おびただしい数の正六角形の石柱群。

「巨人の石道(ジャイアンツ・コーズウェイ)」と呼ばれるこの場所には、海岸線およそ8キロメートルに渡って約4万本もの巨大な石柱が並んでいます。

 

石柱の太さは約50センチメートル。

天辺は踏み台のように平らで、上から見ると整然と敷き詰められた石畳のようです。

 

切り石のように良く整った形をしていますが、これらの石柱は柱状節理と呼ばれる地質構造で、火山活動によってできた自然の産物。

地表付近に上がってきた玄武岩マグマが冷却時に収縮することで、このような柱のような割れ目(節理)がたくさんできるのです。

 

冒頭の写真では「柱」と呼ぶには背が低く感じるかもしれませんが、場所によってはもっと背の高い柱が並んでおり、高いものだと12メートルに達するという迫力のスケールです。

©︎Lachlan O’Dea / flickr

 

ところで、「巨人の石道」という呼び名の由来は、伝説の巨人フィン・マックールの逸話にあるそうです。

アイルランド島に住む巨人フィンが、お隣のグレートブリテン島に住む巨人ベナンドナーと戦いに行くために、この石造りの道を造ったのだとか。

 

「巨人の石道」の存在が世に伝えられたのは17世紀末ごろのこと。

この頃はまだ、火山活動によって柱状節理ができることは知られていませんでしたから、人里離れた辺境の地でこれほど見事な構造物を見たら、伝説になぞらえるのは自然なことかもしれませんね。

 

「巨人の石道」を含むこの辺り一帯の海岸は、1986年にユネスコの世界遺産にも登録されています。

 

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水平方向に広がるマグマが柱状節理を作る

柱状節理のでき方を、もう少し詳しく見てみましょう。

先ほど少し触れた通り、柱状節理はマグマが地表付近で冷却される時にできる地質構造です。

 

どんな風にできるかと言いますと、まずは座布団のように水平方向に広がったマグマを想像してみてください。

地表面に流出したり、あるいは地下の浅いところで広がったマグマは、周りの温度が低いので周辺部分から徐々に冷えていきます。

そして、冷える際、少しだけ体積が縮もうとするのです。

 

座布団のような形ですから、上下方向の縮みについては、基本的には厚みが少し減ればオーケー。

特に問題はありません。

 

一方、水平方向の縮みに関しては、横に大きく広がりすぎているため、全体的に縮むことができません。

そこで、内部にたくさんの割れ目を作って、縮もうとする力をうまく開放するのです。

その時できるのが、垂直方向の割れ目、すなわち柱状節理というわけです。

 

この現象は、干上がった土地にできるひび割れ(マッドクラック)と良く似ています。

マッドクラックができるのは、泥の多い田んぼや未舗装の道路などですね。

マッドクラックの場合、内部の水が蒸発することで体積が縮もうとするわけですが、体積の収縮によって亀裂が形成されるという点においては、柱状節理と同様です。

 

柱状節理も、最初は冷えたマグマの表面に、マッドクラックのような浅い割れ目ができる程度。

その後、マグマの冷却に伴って表面にできた割れ目が奥深くへと伸びていき、「巨人の石道」のような、まっすぐな石柱が何本も並んだような構造になるのです。

チョーク岩の地層に入り込んだ適度な厚さの玄武岩マグマ

北アイルランドの柱状節理は、およそ6500万年前、チョーク岩と呼ばれる白い地層に玄武岩のマグマが水平方向に入り込むことで形成されました。

それこそ「座布団のように」です。

 

チョーク岩というのは固まっていない石灰岩のことで、円石藻という、炭酸カルシウムの殻を持つ海洋植物プランクトンの遺骸が集積してできた地層です。

ですから比較的侵食に弱く、玄武岩マグマの上面にあったチョーク岩は、長い年月の間に削られてなくなってしまいました。

こうして「巨人の石道」が姿を現し、私たちはその石柱の上を歩くことができるようになったのです。

 

また、柱状節理ができるためには、水平方向に広がるマグマの厚さも重要です。

適度な厚さは数十メートルから100メートルくらいと言われていて、地表付近に上がってくるマグマの規模があまりにも大きいと、柱状節理はできません。

例えば花崗岩のように、厚さ数キロメートルにもなるマグマが地下で冷え固まった場合、六角形の柱状節理はできず、数メートル間隔のサイコロ状の割れ目になることが知られています。

柱状節理はなぜ六角形なのか

柱状節理の六角形の断面(©︎Carrie11073 / Pixabay

 

最後に、柱状節理はなぜこんなにも六角形なのでしょうか。

五角形や八角形があっても良さそうなのに。

 

実のところ、柱状節理には四角形、五角形、七角形、八角形など他の多角形のものもあります。

ですが、圧倒的に多いのはやはり六角形。

 

まず一つ目の理由は、六角形だと隙間なく平面を埋められるから。

多角形で平面を埋めようとした場合、五角形や八角形では余分な隙間ができて、うまく平面を埋められません。

隙間なく平面を埋められるのは、三角形、四角形、六角形の3種類だけなのです。

 

そしてもう一つの理由は、縮もうとする力を最も効率よく逃してくれる形が「三つ叉の割れ目」だから。

これは、水平面上のあらゆる方向に均等に縮もうとした場合の、数学的な話です。

 

「三つ叉」の割れ目というのはアルファベットの「Y」のような形の割れ目で、それぞれの割れ目がちょうど120度で交わります。

この形状だと最小のエネルギーで割れ目を作ることができ、縮もうとする玄武岩マグマの力を効率良く開放することができるのです。

この三つ叉の割れ目がつながれば六角形になりますので、結果的に六角形の柱状節理が圧倒的に多くなる、というわけです。

参考文献

場所の情報

もっと知りたい人のためのオススメ本

『日本の地形・地質―見てみたい大地の風景116(列島自然めぐり)』斎藤眞・下司信夫・渡辺真人・北中康文(2012,文一総合出版)


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