©︎NASA / ウィキペディア

噴火の瞬間を国際宇宙ステーション搭乗員が撮影

立ちのぼるキノコ型の噴煙を真上から捉えたこの写真、アメリカ航空宇宙局(NASA)がパブリックドメインとして提供しているものですが、普通の衛星写真ではありません。

実は国際宇宙ステーションの搭乗員、若田光一宇宙飛行士が、上空337キロメートルからデジタルカメラで撮影したものなのです。

 

写真のサリチェフ火山(ロシア・千島列島)が噴火した2009年6月12日、国際宇宙ステーションはちょうど千島列島の上空を通過。

焦点距離400ミリメートルの望遠レンズで撮影したというこの写真には、噴煙や火砕流の様子が非常に鮮明に記録されています。

 

まず目に飛び込んでくるのは、空高く噴き上がった茶色い火山灰の柱。

上部が膨らんでいるため一般には「キノコ雲」と形容されますが、ボコボコとした表面の様子からカリフラワーのようにも見えます。

 

そして茶色い噴煙の先端には、帽子のような白い雲。

噴火の瞬間、火山灰とともに大量の水蒸気も噴出したことがわかります。

 

今度は噴煙の周囲に目を向けてみましょう。

きれいな円の形に雲が切れていますね。

これは、一気に噴き上がった火山灰によって、上空を覆っていた雲が吹き飛ばされた様子を示しています。

噴煙の速度によっては、衝撃波が発生している可能性もあるとのこと。

 

また、噴煙の根元の方を見てみると、サリチェフ火山の山腹を流れ下る火砕流の様子も記録されています。

火砕流とは火山灰と火山ガスが一緒になった高速の流れのことで、内部の温度は数百度以上に達し、移動速度は時速100キロメートルを超えることも。

無人の島なので人的被害はありませんでしたが、海にまで達する大規模な火砕流が山の斜面を覆っています。

 

サリチェフ火山のこの噴火は航空機の路線にも多大な影響を与え、北米路線や欧州路線で大幅な遅延・欠航が相次ぎました。

噴煙の推定高度は16キロメートル。

航空機の飛行高度は10キロメートルあたりなので、それよりも遥かに高い場所まで火山灰が到達したことになります。

 

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日本の北東、千島列島にある活動的な火山

サリチェフ火山の場所(Googleマップ)

 

サリチェフ火山は日本の北東、千島列島(クリル列島)のマツア島にある火山です。

長さ12キロメートル、幅6キロメートルほどの楕円形をしたマツア島の、ほぼ真ん中に位置しています。

標高は1496メートル。

 

富士山や桜島と同じく成層火山で、溶岩の種類は玄武岩と安山岩の中間ぐらいです。

溶岩の種類というのは含まれる二酸化ケイ素の割合で区別されていて、その割合は玄武岩で一番小さく、52パーセント以下。

安山岩だと二酸化ケイ素の割合は52から66パーセントですが、サリチェフ火山の溶岩の場合、およそ54パーセントということです。

ちなみに富士山の溶岩は玄武岩、桜島の溶岩は安山岩です。

 

サリチェフ火山はこれまでにもたびたび噴火を繰り返してきましたが、その中でも特に規模が大きかったのが、1946年11月の噴火。

やはり火砕流は海にまで達し、島の広い範囲で植生が完全に破壊されたということです。

 

なお、マツア島には日本領時代に飛行場が建設され、その後も1990年代までソ連軍またはロシア軍が駐屯していましたが、現在は無人の島になっています。

サリチェフ山とマツア島の日本名は、それぞれ芙蓉山(ふようさん)と松輪島です。

火山灰は小さなガラスや鉱物の集まり

火山灰の光学顕微鏡写真(©︎Wilson44691 / ウィキペディア

 

ところで、火山灰の正体って何でしょう。

紙や木を燃やした時の「灰」とは全くの別物で、火山灰は小さな砂つぶの集まりです。

 

こちらの写真は、火山灰を水できれいに洗った後、顕微鏡で観察した時の様子。

拡大すると、色とりどりの砂つぶであることがよくわかりますね。

 

火山灰というのは、噴火によって空気中に勢いよくまき散らされた、細かい溶岩の粒なのです。

つまり、液体のように流れる溶岩も、上空に噴き上がる火山灰も、基本的には同じもの。

 

火山灰ができる過程はおおよそ次の通りです。

まず、溶岩がまだ地下にあるうちは「マグマ」と呼ばれますが、そのマグマの中には火山ガスのもとになる水がたくさん含まれていて、噴火前にぶくぶくと泡立ちます。

その泡立ったマグマが一気に噴出するので、溶岩(噴出したマグマ)は小さなしずくになって飛び散るわけです。

 

この様子は、勢いよく振った炭酸飲料のビンを開けた時に、中の液体が炭酸ガスと一緒に噴き出る様子に例えられます。

ビンの中の液体がマグマで、飛び散る水しぶきが火山灰、と言うわけです。

中の液体も飛び散るしぶきも、どちらも同じ成分ですね。

 

さて、火山灰を構成する砂つぶの種類は、火山によって異なります。

上の写真はサリチェフ火山の火山灰ではなく、1980年に噴火したセントヘレンズ山(米国ワシントン州)の火山灰。

とは言え、どの火山灰も次の3つから構成されていることに変わりはありません。

 

その3つとは、

  • 火山ガラス
  • 鉱物結晶
  • 岩石の破片

です。

 

火山ガラスというのは、飛び散った溶岩のしずくが空気中で急冷されて、結晶化せずに固まったものです。

「ガラス」と聞くとコップや窓ガラスに使われている特定の素材のことを思い浮かべるかもしれませんが、「火山ガラス」のガラスはもう少し広い意味で、結晶化せずに固体になった物質のことを指しています。

 

また、鉱物結晶というのは、噴火前にマグマの中で結晶化した鉱物のこと。

溶けて液状になったマグマの中にも、砂つぶほどの大きさの固体粒子が含まれているのですが、それらは結晶化しています。

そして、噴火の際にも破壊されることなく、分離した粒として空中に放出されるのです。

 

最後に岩石の破片。

こちらは、噴火の爆発によって破壊された山の一部、つまり元々あった古い岩石が粉々に砕け散ったものです。

 

このように火山灰は、火山ガラス、鉱物結晶、岩石の破片が混ざった砂つぶでできています。

そのため、降下した火山灰を吸入すると呼吸器に悪影響がありますし、目に入れば眼球を傷つける恐れもあるわけですね。

参考文献

場所の情報

もっと知りたい人のためのオススメ本

『ロシア極東 秘境を歩く 北千島・サハリン・オホーツク』相原秀起(2016,北海道大学出版会)


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